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「でもよ、それを理解してなきゃ意味ねーだろ? 俺も何年もプレゼント貰ったけど、そんな意図知らなかったし」
「嘘」
まあどうせ正体は親だが──という言葉は、彼女の有無を言わさない言葉に掻き消された。
「■■君にサンタが来るはず無いよ。だって、■■君、とってもとっても悪い子だもん」
口付の直前より近い彼女の整った顔。先程まで神秘性すら秘めていた彼女の瞳は、全く変わっていないのに、今や威圧感しか生まなかった。
「何言って──」
「ねえ、C組の●●さんとはどういう関係?」
「●、●●? あいつとは別に──」
「言えないよね。言えないような関係だもんね」
無駄の無い動作で立ち上がると、相も変わらず後ろ手のまま、上体を屈まして視線を交錯させる。
「ずるいなあ、■■君。あれだけ私とキスしたのに、あれだけ体を重ねたのに、他の娘に靡いちゃうなんて。……ああ、そっか。■■君、飽きちゃったんだね。捨てられたんだー、私。あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」
まるで狂ったラジオみたいに、乾いた笑い声を上げる彼女からは、不思議と敵意は感じられなかった。あるのは身の毛が弥立つ狂気のみ。竦んだ脚の動かし方なんか、とっくに忘れてしまっていた。
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