たくさんの『笑顔』

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僕は柳田裕也(やなぎだ ゆうや)。 今年の春、私立大学の法学部を卒業した23歳、男だ。 大学生活と言えば親からの仕送りで、有意義でリッチな生活。 講義以外は家からあまり出る事もなく、食事もコンビニ弁当やカップラーメン、出前などカロリーたっぷりの楽々生活を送っていた。 食事をしては寝て、寝て起きてはジュースを飲んだり、オヤツを食べながらゲームをしたり……。またはテレビを見たり、漫画などをソファーに寝転がりながら読む生活。 そんな事もあったせいか、大学に入った当初60キロ前半だった体重は、この四年間で90キロを超えるまでになってしまった。 僕の身長162センチでそれは明らかに太りすぎ。 自分でも肥満という自覚はあるが、あまり気にはならない。 もちろん顔には肉が付き、そのせいで二重アゴが歩く度にプルプル揺れる。 おかげで四年間住んだ僕の城、12畳一間のこの部屋も、何だか最近とても狭く感じる。 まぁ物が床にゴチャゴチャ転がっているから尚更か……。 そういえば最近何か臭うと思ったら、しばらく生ゴミを捨てていなかった。 次のごみの日に出そう。 こんな感じだから彼女も当然いない。 こうして鏡に映すと分かるが、髪は一ヶ月に一回くらい自分でバリカンを使い適当に丸刈り。洒落(しゃれ)っ気もない。 顔も目は細く、だんごっ鼻でタラコ唇。 今ほど太くなかった高校の学校祭。フォークダンスで女の子に触れてもらえないくらい、ブ男だったのだ。 そんな僕も、ぎりぎり単位を取得し、何とか大学を卒業できた。 しかし怠慢な四年間、就職活動もしなかった僕は、現在無職のプー太郎だ。 遠く離れた親の職業は公務員。一人っ子の僕に甘い両親は、卒業して四ヶ月過ぎた今でも、仕送りをしてくれている。 しかしさすがに父親もうるさくなってきて、電話がある度『就職活動はしているのか?』とか小言を言うようになってきた。 仕事はしなきゃと思ってるし、コンビニで就職関連雑誌も買っている。 でもなかなか希望の仕事が見つからない。いや……自分が何をしたいのか、分かっていないのかもしれない。 そういえばこの前、父親が電話でこんな事を言っていた。 『9月からは仕送りしないからな』って……。 そろそろ本腰入れて就職活動しなきゃ。 しかし太りすぎて、持久力がない。 勤務時間が、しっかりとした会社を探さなきゃ。
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