~1章~:殺人家族 :

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◆メットヤ-ド母娘: 18世紀中頃、仕立て屋を営むセアラ・メットヤード母娘が奉公娘2人を殺害したかどで告発された。 この仕立て屋に職を世話されてくる女の子はほとんどが孤児で、どんな仕打ちをされても逃げ帰る家もなければ 訴え出る親族もなかった。 メットヤード母娘はそれを承知の上で、奉公人たちを虐待した。 奉公娘のひとりに、アンという病身の少女がいた 彼女は妹とともに住み込みでこの仕立て屋で働いていたが、知能に少し問題があり物覚えが悪かったので、母娘の怒りをかった。 彼女は食事もろくに与えられず、殴打される毎日。彼女は2度逃亡をはかったが、どちらのときも連れ戻された。 アンは殴られ、縛られて食事も与えられず放置された。 3日目にようやく縛めが解かれベッドに戻ることを許されたが、彼女は衰弱しきっていた。翌朝彼女が起きてこなかったので、怒り狂ったメットヤードの娘が彼女を靴で蹴りつけると、もう彼女は冷たくなっていた… ほかの奉公人には「アンは逃げた」と話したが、アンの妹はそう簡単には納得しない。 母娘は妹をも絞殺し、姉妹の死体をばらばらに解体して包むと、通りへ出て塀越しにそれを投げ込んだ。 杜撰な犯行だったが、母娘は疑われることはなかった。 しかし4、5年も経つと この母娘の間に波風が立ちはじめる。 母親は口ぎたなく誰彼かまわず罵る、不満の塊のような女だった。 娘に対してもその態度は変わらなかったので、娘を憐れんだ男が現れ、彼女が母親を残して男のもとへ出奔すると、母親は烈火のように怒った。 母親は娘の新居をたずね、玄関前で罵り散らした。何度転居しようとも彼女のいやがらせは果てしなく続いたので、根負けしてある日娘が母を招きいれると、母親は彼女に殴りかかり、 「おまえだって同じ人殺しのくせに、ひとりだけ逃げようったってそうはいかないよ」とわめいた。 どうにか母親を家から追い出したものの、愛人は「人殺しって何のことだ?」 と彼女に尋ねる。 仕方なく彼女がすべてを男に話すと、男は 「大丈夫、当時きみは未成年だったんだから罪には問われないさ。警察に行こう。しょっぴかれるのはお義母さんだけだよ、これでやっとあのうるさいキチガイババアから解放される」と言った。 しかし彼は間違っていた。 メットヤード母娘はいずれも刑罰から逃れることはできなかった。 2人は処刑台の露と消えた…
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