~1章~:殺人家族 :

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◆伊勢崎市、金井一家事件: 2001年11月12日夕刻、群馬県伊勢崎市消防署に119番通報が鳴る。 「女房が死んでるみたいなんだが、来てくれないか」 受話器の向こうの声は落ち着きはらっていた。 救急隊員が現場の金井家に駆けつけてみると、問題の遺体は仰向けに寝かされ、毛布がかけられていた。 隊員が毛布をめくると、通報者が「妻」と言ったその遺体は 異様なほど痩せこけていた。 のちに司法解剖により、彼女は158センチの背丈に対し、26キロの体重しかなかったことがわかった。 死因は餓死であった。 彼女は長期にわたって家族に食事を与えられず、ジワジワと死んだのである。 「未必の故意」による殺人容疑で逮捕されたのは、被害者の内縁の夫、金井幸夫(37歳)と、その両親と姉の4人。 彼らは被害者が死ぬであろうことを知りながら、何の手だてを講じることもなく放置したのだった。 金井幸夫は1964年に生まれ。兄弟は年子の姉と2歳下の妹がいる。 親子5人は市営住宅に住まいを構えており、入居当時はごく平凡な家族のようだったという。 だが金井の両親にはこれといった定職がなく、難聴気味の父親は工員や左官などをしていたが、どこも長続きしない上に競輪好きで家に入れる金はほとんどない。 母親も工場にパートで出ていたが、すぐ辞めてしまっている。 この母親の幸夫に対する躾は一貫しないもので、「長男だから」とべたべたと甘やかす反面、近所にも幸夫の泣き声が響きわたるほどの虐待も働いていていたらしい。 甘やかされながら突き放される、という不安定な躾を受けた幸夫は、内気で人見知りのする子供に育っていった。 しかし自分より弱い者を探すのには聡く、小さい子をいじめながらこき使うような真似もしていたという。 そんな彼は「普通学級で勉強についていくには難があり。 家庭環境も恵まれず勉強できる環境にない」という学校側の判断で、特殊学級に配置されてしまう。 そこでクラスメイトとして出会ったのが 本事件の被害者である長谷川三根子であった……  
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