包丁

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包丁

『まぁ~、まぁ~』と呼ばれる声がした。 2階にいる私を、母が呼んでいた。 母はお風呂に入っているはず… 私の家は狭く小さな家ではあったが、お風呂場から呼ぶ声が聞こえる筈はない。 『バスタオル忘れたのかな?』と、母のいるお風呂場へ行くと… 母は、身体も髪も濡れたままの状態で、青い顔をして小刻みに震えていた。 私:『どうしたの?』 母:『…お父さんがね    包丁投げたの…』と 母:『こうやってね…    歯を上に向けて…』 人差し指と親指で刃の背を挟み、母に狙いを定めて投げたと言うのだ。
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