第一章 始まりの月華

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紺色の空の下。巨大な月の前に二つの影が対峙していた。 輝く月の両端を挟むようにして立っている影は、少年と少女のものだ。 少女は気まぐれに吹く温い風に髪を靡かせていた。 色白の華奢な身体は、白のカッターシャツと、黒いベルトの嵌まったショートパンツに覆われていた。 膝は薄い布に隠されてあり、その下はブーツがある。肩からは無地のコートが足元まで垂れていた。 これらは統一して、黒色だ。 靡く夜色の髪は未だに風と戯れている。 しかし少女は一切気にする様子はない。 少女の深く澄んだ水のような瞳は、向かい合っている少年にただ静かに向けられていた。 少年もまた、少女を見ていた。
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