第一章 始まりの月華

3/85
109人が本棚に入れています
本棚に追加
/361ページ
無駄の無い輪廓を包む少年の髪は見事なまでに黒だった。 通常より僅かに細い身体は全身黒の服でおさまっている。 鋭い瞳だけは、銀を帯びた黒だった。 少女から向けられている視線の中からは、何も感じられずに淡々と見つめ返していた。 一体どれほどの時間が過ぎたのか、状況は何も変わらない。少女の綺麗な髪は緩やかに動いたままだし、月の光に反射して放っている瞳も、動く事なく少年の瞳を見ていた。 本当に、何も変わっていない。 そこで少年はふと思う。 まだ、動くべきではないのかと。 なら、もう少しこのままでいてみようではないか。 そう考えて、先に動いたのは少女の方だった。
/361ページ

最初のコメントを投稿しよう!