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無駄の無い輪廓を包む少年の髪は見事なまでに黒だった。
通常より僅かに細い身体は全身黒の服でおさまっている。
鋭い瞳だけは、銀を帯びた黒だった。
少女から向けられている視線の中からは、何も感じられずに淡々と見つめ返していた。
一体どれほどの時間が過ぎたのか、状況は何も変わらない。少女の綺麗な髪は緩やかに動いたままだし、月の光に反射して放っている瞳も、動く事なく少年の瞳を見ていた。
本当に、何も変わっていない。
そこで少年はふと思う。
まだ、動くべきではないのかと。
なら、もう少しこのままでいてみようではないか。
そう考えて、先に動いたのは少女の方だった。
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