遺言

5/8
前へ
/34ページ
次へ
「他のやつ等は?」 「みんな明日来るって」 「薄情なやつ等だな」 「仕方ないさ、みんな仕事があるんだ・・・・・・親父が亡くなったの、急だったし」 茶を飲みながら、2人は他の兄弟の話をした。じいちゃんは本当に急に亡くなった。巡回に町の職員さんが来た時には既に息を引き取っていた。 ふすまで仕切られた隣には、じいちゃんがいる。青い光が歪んだふすまの隙間から漏れる。 「誰かが起きてないといけないだろう」 「今は専用のお線香があるから大丈夫よ」 叔母さんが蚊取り線香の特大版みたいな物に火をつける。じりじりと赤みが進み、緑を減らすソレを見るのはなかなか面白い。 「あら、アンタこの部屋にいる?」 周りがバタバタする中、動かずジーッと線香を見ていると、お母さんが冗談半分に笑った。いる、というのはこの部屋で寝泊りするかという事だ。 流石にそれは、と苦笑しながら若干痛む膝を伸ばし、部屋を出た。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加