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サユリンが重傷を負った。
歩道をぎゅーちゃんと歩いている時、トラックが2人に突っ込んだのだが、ぎゅーちゃんを押し出しサユリンだけが壁とトラックに挟まれた。
ぎゅーちゃんは携帯で救急車を呼んだ後、私のところへ来た。急いで現場に行くと、まだ救急車は来ておらず、ユリちゃんへ声をかけるが、聞こえるのは苦しそうな声だけ。あやふやだが意識があることにホッとした。
そのまま救急車に2人とも乗り、今ぎゅーちゃんは泣きまくったことによる過呼吸で、別室で処置してもらっている。
運転していた人はユリちゃんに突っ込む前に既に心臓が停止しており、被疑者死亡で警察の事件は終わった。運転手は別に心臓が悪いわけじゃない。比較的健康体で、ついこの間健康診断の結果を受け取り、異常がないことに喜んでいたと言う。
実はこの事件に目撃者がいた。でもいつの間にか話を聞いていた警察署から居なくなり、探してもらったが結局見つからなかった。
「すみません」
「はい?」
廊下のソファーに浅く、だらしなく足を伸ばし腰掛けていると、目の前に男がたっていた。
ああ、邪魔だったかな。そんな風に思いながら、座りなおし通れるようにした。
「元気?」
「へ、誰が」
「ぎゅーちゃんが」
おかしなやつだと思った。
久しぶりに会う級友に挨拶するみたいな軽いノリの質問に、一瞬頭が真っ白になった。
男はきれいな笑みを浮かべ、私の隣に腰掛けた。
ぎゅーちゃんのことを聞くと言うことは、ぎゅーちゃんの身内なのか。でもそれにしたら落ち着きすぎてる。ぎゅーちゃん自体に目立った傷はないが、友達の俺でさえ事件に巻き込まれた事に動揺を隠せていないのに、この男はやけにひょうひょうとしている。
「元気、じゃないけど、元気な方だよ」
サユリンに比べたら。
言いそうになったけど、口をつむんだ。そんな事は言えない。ぎゅーちゃんも同じ傷を負っているんだ。心に、大きな傷を。
「そう、よかった」
「・・・・・・」
男は何故か私をじろじろ見てるけど、私はソレを無視して前の壁だけを見ていた。なんだか気持ち悪い男。
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