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長い夢の中で、少年が泣いていた。
『ごめん』と何度も謝り、ぼろぼろ大粒の涙が零れ落ちている。
次に見たのはあの美しい景色ではなく、白で囲まれた空間だった。
白い服に包まれたじいちゃん1人がそこに居て、『すまん』とこぼし、私の頭をなでた。
「私」
「うん」
「なんでここにいるの?」
じいちゃんは私にどこまで覚えているかを聞いた。
誰かと一緒に木に登った事を話すと、もう一度『すまん』と謝れた。
じいちゃんと二言三言やり取りをしていると、急に睡魔が襲ってきた。じいちゃんの淡々とした、低い声がとても心地よく、睡魔に私はどんどん侵略されていった。
「おやすみ」
完全に目を閉じる前のぼやけたじいちゃんは、何故か悲しそうな表情で手で目元を拭っていた。
この時、私は既に普通の人ではなくなっていた。
ごめんなさい、ぎゅーちゃん。
お願いだから、僕を嫌いにならないで。
過去.完
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