過去

5/5
前へ
/34ページ
次へ
長い夢の中で、少年が泣いていた。 『ごめん』と何度も謝り、ぼろぼろ大粒の涙が零れ落ちている。 次に見たのはあの美しい景色ではなく、白で囲まれた空間だった。 白い服に包まれたじいちゃん1人がそこに居て、『すまん』とこぼし、私の頭をなでた。 「私」 「うん」 「なんでここにいるの?」 じいちゃんは私にどこまで覚えているかを聞いた。 誰かと一緒に木に登った事を話すと、もう一度『すまん』と謝れた。 じいちゃんと二言三言やり取りをしていると、急に睡魔が襲ってきた。じいちゃんの淡々とした、低い声がとても心地よく、睡魔に私はどんどん侵略されていった。 「おやすみ」 完全に目を閉じる前のぼやけたじいちゃんは、何故か悲しそうな表情で手で目元を拭っていた。 この時、私は既に普通の人ではなくなっていた。 ごめんなさい、ぎゅーちゃん。 お願いだから、僕を嫌いにならないで。 過去.完
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加