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「行くぞ」
目を丸くする私を背に、そそくさと歩き始める静季。
つながれた手に引かれて、仕方なく私も歩き始める。
なんなんだ、いきなり。
怒ってるのは私なんだぞ。
なんで静季がそんな顔で私を引っ張るのよ。
そんな不満を心の中で繰り返して、私は大きな背中を見上げた。
「静季の馬鹿」
「…悪い」
すまなさそうな返事に、少し高鳴る鼓動を感じながら。
***
「さ~次はスマッシュの練習だ
。2人1組、コートひとつを6人で使え」
そんな先生の声に、私はぴたりと動きを止めた。
体育の競技はテニス。
ス、スマッシュ…?
それって、おもいっきし上向くよね?そうよね?
……ヅラがとれるじゃないかぁぁぁぁぁ!!!
私心の叫びは、口にしていたならきっと、ここから富士山の頂上にいる人まで聞こえていただろう。
絶体絶命、体調悪いふりして保健室に行くか。
ヅラのために?授業さぼんのか?この無遅刻無欠席優等生の私が?
着替えのミッションクリアしたばかりで、さっそく次のミッションかい。
――――どうしよう、マジで。
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