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一人頭を抱えそうな勢いで必死に考えていると、ふと、なんとも神妙な声が頭上から降ってきた。
「どうすんだよ…?」
「今考えてる」
「俺も、考えてる」
…静季。
ありがとう。来てくれただけで、少し落ち着いた。
何かあっても、静季がいたらきっと何とかして助けてくれる。
「よーい、はじめ!」
だから、馬鹿だよなぁ、私。
何も考えずに、ボールを高く放り投げ、スマッシュを打ったんだ。
案の定、頭が少し涼しくなって、頬に長い毛が落ちるのを感じた。
こんな大勢の前で、私が空じゃないとばれたら、いったいどうなるんだろうな。
意外と呑気だ、私。
――――ほら、助けが来た。
わかってたよ。
「空!!」
名前を呼ばれたが顔を上げることは出来なかった。
何故なら、静季が覆いかぶさるようにして私を抱きしめていたから。
「先生、空が体調が悪いみたいなので、保健室に連れて行きます」
「大丈夫か!?分かった。頼む」
そんな会話が遠くに聞こえる
。
「行くぞ」
静季の声は、慎重だった。
かろうじてウイッグを頭上に乗せたまま、私たちはテニスコートからの脱出に成功する。
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