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ホテルの部屋は、私が独り暮らしをしていた部屋の何倍も広かった。
「うわぁ…」
私は呆気にとられ入り口に立ち尽くしていたが、慶吾は慣れた雰囲気で中に入った。
「風邪引くから、さっさと風呂入って着替えろ。」
「え、あ、でも着替えが…。」
「着替えなら、お前が風呂に入ってる間に準備するから、早くしろ。」
慶吾はそう言うと、どこかに電話を始めた。
私は言われた通り、お風呂に入った。
浴室は広く、とても綺麗な作りで、浴槽もそれに見合う大きさだ。
私と慶吾との世界の違いを、私はまじまじと感じている。
きっと彼は、なんの苦労もなく育って来たのだろう。
何不自由ない暮らしが退屈で、つまらないものだと思うくらいに。
そう思うと少し腹が立った。
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