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麗子さんに連れられて行った部屋には、とても大きな鏡があった。
「さぁ、この前に立って!」
麗子さんに手を引かれ、鏡の前に立つ。
鏡には深紅のドレスに包まれた、不格好な私がいた。
「なんか、かわいそう…。」
私は自分の姿にそう呟く。
「どうしてそう思うの?」
麗子さんが問い返す。
私はうつむき加減で答えた。
「こんな素敵なドレス…このドレスだってもっといい人に着られたかったろうなって…。」
その言葉に、鏡に映る麗子さんは微笑って見せた。
「確かにかわいそうね。
素敵なドレスを着てるのに、そんな顔されたんじゃ。
今からあなたはもっと綺麗になるの。
ドレスに負けないくらい、素敵な笑顔をしないとね!」
麗子さんの笑顔に、私も少し期待した。
残り短い人生…なら精一杯楽しもう。
いっぱいいっぱい笑おう。
「はい!」
形はどうであれ、私は慶吾との恋人生活を楽しもうと決めた。
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