8人が本棚に入れています
本棚に追加
「はい、出来たよ!」
麗子さんが肩を叩く。
鏡に映る私に自然に笑顔がこぼれる。
「とっても可愛くなったよ!
今度はドレスが、美咲さんの笑顔に負けちゃいそうね。
慶吾もきっと喜ぶわ。」
麗子さんが慶吾の名前を出す度に、私は少し複雑な気分になった。
私たちの関係は、けっして許されるものじゃない。
麗子さんの笑顔も、私の笑顔も…きっと作り物だ。
残りの時間も、こうやって誰かを騙して生きるのだろうか?
いや、考えるのはやめよう。
残りの命を楽しむと決めた。
だから、やめよう。
これでいいんだ。
何度も自分に言い聞かせた。
「さぁ、慶吾に見せてあげよう!」
「はい。」
この先にある2人の未来がどんなものでも。
それは2人のもの。
2人の契約。
お互いに利用し、利用されて…
それでもいい。
今はこの命を楽しみたい。
カタチはどうであれ、私を必要としてくれた。
それだけで嬉しかったから…。
最初のコメントを投稿しよう!