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まず、母はいわゆる“見える人”なんですが…
幼少時代家族と海にいったんですって。
その日はあいにくの濃い霧がでて、海を覆ってしまっていました。
船着き場から、ぼーっと海を見ていると、遠くに沢山の光が海の上を漂っています。
少女はそれを船の明かりだと思いました。
「ねぇ、ねぇ、船の明かりがきれいだね!」
「え?明かり?なんもないじゃないか。」
でも、無数の光は、海の上をゆらりゆらりと揺れるばかりで…。
そのとき、おばちゃんがこそっと少女に言いました。
「いい、ちゃっこ。数年前に津波があっただろう。今日はその日なんだ…。お前が見てるのは…」
人魂。
遺体が見つからず、そのまま、海になった人もいるでしょう。
そんな躯を探しに、あの世から帰ってきたのかもしれませんね…。
少女は成す術なく
ただ、見つめているだけでした。
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