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「おと…」
「違う?」
「違いますよ、ケータイの話です。友達が最新のケータイ買ったんですけど、バグだらけなんですって」
「へぇ…そりゃ災難だねー」
間延びした返事。
信じてないのかもしれない。
だからどうと言うわけでもないけど。
仕事でもないことに気を張るつもりはないし。
「この前お客さんで、彼氏作りな、っていう友達から彼氏の愚痴聞かされて意味わかんなかったって子がいてねー」
「へー」
「深読みし過ぎたわー」
今度は私が間延びした返事。
でも信じてない訳じゃなくて。
千羽さんの深読みはあながち間違いではないという、動揺の現れ。
「佐倉さんは?彼氏、いる?」
…この話題は切り上げよう。
心の中のどろどろが込み上げてきそうだ。
結局私はそう結論づけた。
鏡には千羽さんの真っ直ぐな奥二重が返事を促しているのが分かって、徐々にイライラが溜まっていくのが分かる。
「いませえん」
私は、これ以上詮索するな、の意味を込めて鏡の前の雑誌を手繰り寄せた。
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