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呼び出されたのは美容院を出た直後、16時になるかならないかの頃だった。
大事な話があるの。
その名目のもと、最寄りのファミレスに緊急招集。
大体分かってはいる。
ファミレスという比較的開放的な場所で大事な話もくそもあるか、ということくらい。
それでも私が赴くのには、理由があった。
「あ、怜っ!こっちー」
カランカラン、という軽い鈴の音。
店内に響くような大きい声とともに、理花が手を挙げた。
二人掛けのテーブルには既にオレンジジュースが置いてある。
「あ、髪切ったの?」
「うん、仕事忙しくなってきたから」
「へー。私エクステつけたのに彼氏に気づいてもらえなかったあ~」
一週間前に会ったときより10センチ程度長くなった髪を見て、放っとけば伸びるのに。と思うのは何回目だろう。
「まだ彼と同棲してるの?」
「うん!でもこないだ女物の香水つけて帰ってきたからさ~もー別れよっかなあ…」
「じゃあ少しの間家に帰ったら?お父さん、帰ってきてるんでしょ?」
理花の母親は他界して、父親は海外出張の多いお仕事。私の親は若い内に離婚していて、今はもう会っていない。
そんな環境の中育った私たちは、小さい頃からなにかと一緒に行動していた。
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