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そんな平和が続いていたある日。姉ちゃんが散歩に来なかった。
(今日は違う散歩コースにしたのか?)
と思っていると、いつもの方向から姉ちゃんが走って来た。
一人で。
姉ちゃんはいつもはリードを持っているはずの手に、紙を握りしめていた。
そしてその紙を俺に貼りつけた。
姉ちゃんはとても心配そうな顔で、今にも泣き出しそうだった。
そしてまた、いつもの散歩コースの方向に走って行ってしまった。
(ん?なになに?『この犬探しています。見かけた方はこちらの番号までお問い合わせ下さい』……!?)
どうやら、犬が逃げてしまったようだ。
なるほど、それで散歩に来なかった訳か。納得だな、うん。
(……って!納得してる場合じゃねぇよ!)
好きな女を泣かしとく訳にゃいかねぇ。
俺は電線を使って、この付近の電柱達に話しかけた。
(おい!お前ら聞いてくれ!)
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