甘く甘く、堕ちていく。

4/7
前へ
/7ページ
次へ
 あれは、吐く息全てが真っ白い、冬の季節。  襟首に巻いたマフラーの温かさを感じながら、ネオンではない色とりどりの電飾に彩られた夜の街を歩いていた。  家に帰る前に一息付きたい。寒いのが苦手な私は、とにかく暖かさを求めていた。  そこで、いつもの帰り道には見慣れないお店を見つけたのだ。  そのお店の名前は「プラリネ」。  窓から漏れる薄橙色の明かりは、見ただけで心を暖かくさせた。  元来、新規開拓という名のお店周りが趣味な私にとって、こういった新店舗というのは興味の対象であり、数少ない楽しみの一つでもある。  仄かに香る、甘いチョコレートの香り。心だけでなく、体も満たされそうな予感がした。  折角だ、今日はここでお茶して帰ろう。そう決めた私は、来訪者を告げる扉のベルをちりりんと鳴らした。 .
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加