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「っ痛」
午前一時過ぎ、左の二の腕辺りに突然強烈な痛みが走り私は目を覚ました。
その痛みは、まるで肉を抉られるような痛みだった。けれど、そこを触ってみても血が出ているというわけではなかった。
なんだ、夢か。
そう思ってまた眠りについた。だから、次に目を覚ます頃にはその痛みのことは、夢の中での出来事だとすっかりおもいこんでしまった。
「おっはよぉ、知華」
「あ、美里おはよう」
いつも通りの登校風景。
いつも通りのやりとり。
そして、
「おっす、知華。後ついでに美里」
いつも通りの出会い。
「たぁかぁみぃ、なんで私はついでなのさ」
「うーん、ま、気にするな」
「うぎゃ」
「やべ、美里が壊れた」
天深と美里の他愛もない掛け合い。これもやっぱりいつも通り。全部いつも通りで見慣れている。けれどこのいつも通りが、私は大好き。
「うにゃあ、知華独りで笑って。なにか面白いことがあったの、だったら、私にも分けなさい。その胸の辺りに付いてるけしからんものも私に分けなさい」
「ちょ、美里なにどさくさにまぎれて変なこと言ってるの。私のは普通だよ」
「んにゃ、それは普通じゃあないよ。天深、あんたもそう思うでしょ、って何逃げてんのさ」
「そんなガールズトークについていけるか」
そりゃ、そうだよ。でも、私のってそんなに……。
そんなことを考えていると、
「痛っ」
夢の中で感じた痛みが襲ってきた。その痛みのあまり私は、その場所を押さえる。
「知華、どうしたの。ははーん、さてはまた二の腕に余分なお肉でも付いたのかい」
「またってなによ、またって」
良かった、美里には気付かれてなかった。
「…………」
少し離れた所で天深が渋い顔をして見ていることには気がつかなかった。
痛っ。まただ、またあの痛みが来た。今は、三時間目の古典。集中しなくちゃいけないのに、たびたび来るこの痛みのせいで全然集中できない。順番を考えると次の問題は、私に当てられる。だから、せめてこれだけでも解かなきゃ。
「えー、ではこの問題は御坂さん」
あ、れ。御坂さんって、私の次の人。
「先生、まだ松谷さんが当たってません」
「松谷、さん。ああ、失礼しました、最近どうも物忘れが多くて。では、改めて松谷さんこの問題を」
「えーと――――」
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