ほら、やっぱりおいしかった

5/6
前へ
/6ページ
次へ
……ん?晴矢がこない。とっくにお湯は注いでいるはずなのに。つくえはもう片付いてしまった。晴矢のほうを見やると、なにやら容器を持ったまま立ち尽くしている。 「どうしたんだ?」 「いや、これ、お前が食べるんだよ、な……?」 「なにをバカなこと言ってるんだ。当たり前だろう。わたしの昼食なのだから」 時間はもう既にかなりオーバーしているが。 「……やっぱりこれ、おれが食う」 「は?」 だからそれはわたしの昼食だと言ってるではないか。そう言おうと口を開くのだが、わたしがしゃべるよりも早く、晴矢が口を動かした。 「インスタントばっかだと体に悪いだろ。今日はおれが作る」 「…………」 「なんだよその顔」 「な、んでもない」 ぎこちなく首を横に振る。充分とまではいかずとも了承を得た晴矢はキッチンに立って料理を始めた。慣れた手つきで調理を進める姿に、自然と口元をほころばせてしまう。 どれくらいその様子を眺めていたのか。いい香りが漂ってきた。ああこれは、わたしの好きな――、
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加