1人が本棚に入れています
本棚に追加
油蝉が大気を揺らし、目眩を誘う熱く重々しい湿った大気が辺りに立ち込める。
山林の木々はその葉たちを重ね合い音を立てる事もない。
灼熱の炎天下の中、断熱材が壁に入っていないプレハブの中の室温は、三十五度を越える。
高温のサウナハウスの様なそのプレハブの中では、小型の扇風機が首を回す。
その風下では互いの上がり切った体温と、裸体を伝う汗が男を朦朧とさせる。
女は小さな控え目な喘ぎ声を出すだけで、その声を制御してるかの様にも思えれば、性的行為の一連に感じてないようにも思える。
その一種の麻薬のような汗は男をエクスタシーの絶頂へといざなう。
その甘美な空間を彩る二人の吐息。
その吐息が更に男のキスを激しいものへと変える。
そのキスを受容する訳でも無く、ただ時間に身を委ねるだけの女。
時が過ぎていくのを待つだけ。
そして、男は少しずつ気付く。
もうかつての様な愛がそこには無いことを。
最初のコメントを投稿しよう!