2/2
前へ
/2ページ
次へ
油蝉が大気を揺らし、目眩を誘う熱く重々しい湿った大気が辺りに立ち込める。 山林の木々はその葉たちを重ね合い音を立てる事もない。 灼熱の炎天下の中、断熱材が壁に入っていないプレハブの中の室温は、三十五度を越える。 高温のサウナハウスの様なそのプレハブの中では、小型の扇風機が首を回す。 その風下では互いの上がり切った体温と、裸体を伝う汗が男を朦朧とさせる。 女は小さな控え目な喘ぎ声を出すだけで、その声を制御してるかの様にも思えれば、性的行為の一連に感じてないようにも思える。 その一種の麻薬のような汗は男をエクスタシーの絶頂へといざなう。 その甘美な空間を彩る二人の吐息。 その吐息が更に男のキスを激しいものへと変える。 そのキスを受容する訳でも無く、ただ時間に身を委ねるだけの女。 時が過ぎていくのを待つだけ。 そして、男は少しずつ気付く。 もうかつての様な愛がそこには無いことを。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加