はなし 3こめ

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 俺は何故か女の幼じみと帰りを一緒にしていた。  何故だろうか。  もう何年も話したことがない。あいさつはしない。目が合ってもすぐ逸らす。たまたま高校が同じだったけれど、一切口をきかずにここまできていた。  昔は仲が良かった。あることが起こるまでは。それまでは普通の仲が良い友達だったんだ。それまでは。 「ねぇ」  それが何年ぶりかの彼女の俺だけに対する最初の言葉であった。廊下ですれ違う時や授業などで声を聞くだけならあったが、なんだかとても久しい思いにかられてしまう。  平静を保って、声が上擦らないように慎重に言葉を選ぶ。 「何?」 「……ごめん」  は?  何?  ごめん、だと?  ナニヲイッテルンダ。  俺があの時どう思ったなんかわかっちゃいないだろ。俺だけが苦しい思いをしたわけじゃないかもしれないから、彼女も何か考えることがあったから、だから許して、見て見ぬふりをしようと決めたのだろう。 「で、そんなことを言いに来たんじゃないんだろう」 「うん」  小さく答えた。怯えているように見えた。 「友達になって下さい」 「は――?」 「私があなたにしたことは決して許されるものじゃないし、赦されるとも思ってないよ。けどね……今さらだけど、ちゃんと向き合いたいんだ。あなたと」  ふざけてる。ふざけるな。馬鹿にするな。  でも、俺は彼女を赦すと決めてしまった。だから、俺の答えは答えるまでもなく決まっているわけで。 「わかった」  俺は彼女を許していた。
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