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俺は何故か女の幼じみと帰りを一緒にしていた。
何故だろうか。
もう何年も話したことがない。あいさつはしない。目が合ってもすぐ逸らす。たまたま高校が同じだったけれど、一切口をきかずにここまできていた。
昔は仲が良かった。あることが起こるまでは。それまでは普通の仲が良い友達だったんだ。それまでは。
「ねぇ」
それが何年ぶりかの彼女の俺だけに対する最初の言葉であった。廊下ですれ違う時や授業などで声を聞くだけならあったが、なんだかとても久しい思いにかられてしまう。
平静を保って、声が上擦らないように慎重に言葉を選ぶ。
「何?」
「……ごめん」
は?
何?
ごめん、だと?
ナニヲイッテルンダ。
俺があの時どう思ったなんかわかっちゃいないだろ。俺だけが苦しい思いをしたわけじゃないかもしれないから、彼女も何か考えることがあったから、だから許して、見て見ぬふりをしようと決めたのだろう。
「で、そんなことを言いに来たんじゃないんだろう」
「うん」
小さく答えた。怯えているように見えた。
「友達になって下さい」
「は――?」
「私があなたにしたことは決して許されるものじゃないし、赦されるとも思ってないよ。けどね……今さらだけど、ちゃんと向き合いたいんだ。あなたと」
ふざけてる。ふざけるな。馬鹿にするな。
でも、俺は彼女を赦すと決めてしまった。だから、俺の答えは答えるまでもなく決まっているわけで。
「わかった」
俺は彼女を許していた。
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