「幸せを求めて」

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 魔法陣、水鏡、蝋燭、香、分厚い書籍。狭い室内のいたるところに怪しい物品が置かれていた。それらを一つずつ確認しているのは黒いローブを纏った少女だった。首には趣味が良いとは言えない紋章が刻ませた金属を下げている。奇怪な模様や文字のかかれた円の中で少女は深く息を吸い込んだ。  少女は身に着けている銀の指輪をじっと見つめた。現代にはあまり見ないローブの裾が垂れさがり、少女の細い手首があらわになった。そこにはくっきりと切り傷。重そうなまぶたの下には死んだ魚のような瞳が鈍く光っている。少女は懐から薄い手帳を取り出した。手帳に書かれている通りにたどたどしい口調で異国の呪文を唱えていく。全て言い終わった所で少女は手帳を閉じた。
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