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少しばかり悩んだのち、少女は言葉を紡ぎだした。
「我は神を呪い悪魔を信仰する者。我は汝を求める故に呼び出す。クロエル伯爵。我の前に現れよ」
深夜ということもあり、辺りはしんと静まり返っている。少女の声だけが部屋に響いていた。
「我の望む通り穏やかに、目に見える形で、我に解することの敵う声を以って、汝、我に語りかけよ……我の元に来たれ、クロエルよ」
それは少女が夜を徹して覚えた呪文だった。しかし室内は何も変化がない。少女が自分のやっていることが少し馬鹿らしくなってきたときだった。空気がぴんと張り詰め、乾いていく。背後には確かな視線。期待と恐怖が少女の胸に込み上げてきた。振り返るとそこには世にも恐ろしい悪魔の姿があった。何てことは無かった。
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