「幸せを求めて」

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 少女はいよいよ徹夜をした意味を考え始めた。 「馬鹿みたい……」  頭を抱えて少女は眉間にしわを寄せた。その時だ。ふわりと芳しい香りが少女の鼻腔をくすぐった。その香りは濃厚で甘く頭痛を引き起こしそうであった。どこかで嗅いだことのあるような懐かしい匂いだった。少女がその芳香が何であったか思いだそうとしている時であった。  男の声。それも含み笑いを少女は聞いた。不吉そうであり、抗いがたく魅力的な声だった。突如、少女の目の前に黒い霧が立ち込める。液体と気体の間のような奇妙な動きで空気中を漂い、次第に人の形を成していく。
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