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「大丈夫か?どこか痛んだりしない?」
目を覚ました私の前には、少々童顔で中性的な感じの軍服を着た青年がいた。
この青年が誰なのかはわからない。
「誰?」
「僕はアルヴィス、アルでいい」
「そう……」
会話が続かない。
外は夕焼けで燈に染まっている。
正直言って、眩しい。
「カーテンを閉めてもらえる?」
「ん、ああ」
シャッシャッ、と軽い不協和音と共に夕日が遮られる。
「アル、と言ったわね。なぜここにいるの?」
「君の保護が僕の仕事だからだ」
「保護する理由は?」
「君が敵国の重要人物であり、重要機密を握っているから」
私は天井を見上げてから、間を置いて彼に語る。
「私は重要機密なんて覚えてないわ」
「どういうことだ。騙したのか?」
「さぁ、それもわからない」
何故なら、自分がなんなのかすらわからないから。
そう伝えると彼はしばらく呆然として、そして項垂れる。
「そんなのアリかよ……ねぇよ……有り得ねぇよ……」
私は襟を掴まれ、アルに迫られる。
「嘘ならすぐに撤回しろ!そうでないならなにか思い出せよ!お前のせいで何人犠牲になったか言ってやろうか!」
「そんなふうに掴みかかって、私が『はい、そうですか』となにかを思い出せると思う?」
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