運命の日

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満月の静かな夜 月光りが辺りを照らし、風にそよぐ葉の音だけが聞こえる。 山間の小さな村 外れに建つ古く大きな屋敷 その離れにある明かりの灯らない一番端の部屋の戸だけが、誰かを迎え入れるかのように開かれていた。 広い畳の部屋 置かれた立派な箪笥 女の子らしい小物が並ぶ鏡台 月明かりが、部屋の中央に座る白い着物の少女を照らす。 あどけなさの残る横顔 肩までの黒髪に大きな瞳 折れそうに細い身体 青白い肌 そして首には、紐状の赤い痣 少女は1人、開け放たれた戸から庭を見つめていた。
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