運命の日

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それを持って産まれた者は、16歳になると『夜月神』の生け贄となる。 16になったからといって、その日に差し出されるわけではない。まず『夜月神』が現れ日を告げる。 そして『神』は毎晩娘の元を訪れ、約束の日に連れ去る。 古くからの掟。 遠い昔、神と交わした契約なのだと言い伝えられてきた。 今日は『神』との最初の日。命の期限を告げられる日。けれど、沙耶の顔に恐怖や悲しみはない。 静かな屋敷。 時折、夜風が庭の草木を揺らす。 突然、強い風が吹き雲が月を隠した。暗闇が辺りを包むと、沙耶は真っ暗な中、裏山に続く庭を食い入るように見つめる。 急に何かの気配がしたかと思うと、大きな影が塀を飛び越え庭に降りるのが見えた。
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