フィンの家

7/10
前へ
/44ページ
次へ
『フィンくんのお父さんは医師なんですね』 更夜の言葉に成來は頷いた。 『叱られてしまったよ…なぜ無理をさせたと』 『ごめんなさい…』 更夜は言いつつも成來に笑いかけた。 しかし、次の瞬間すっと無表情になり、成來のその瞳を射抜いた。 『まだ、公主行方不明の報は流れてないですね』 『あぁ。こちらが主だな』 成來はある新聞の一面を更夜に差し出した。 そこには更夜の同年代と見える少女の写真があった。 文字を上手く読めない更夜のために、成來はまた新聞を手元に戻すと読み上げた。 『"リンブルク州侯末娘、行方不明。詳細未だ分からず"』 『情報操作?』 『多分な。ボンに行けば分かるさ。 こっちも色々と大変だ。種族間緊張に、末娘の失踪じゃあな』 更夜は悪魔の地に入ってすぐ、汽車の中で身元を確かめられる災難に見回れた。 フィンの機転で難を逃れ、更夜達はそれが自身達の動向が漏れたからだと思い込んでいた。しかし、それが速すぎる情報であったのだと気付いたのは、夜が明け冷静になってからだった。 宿にあった地方紙に目を通し、州侯の末娘行方不明を知ったのである。 『私は、混乱を生みますか?』 『俺には分からないさ』 成來は新聞を畳むと立ち上がった。 『フィンの父親を呼んでくる』
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加