フィンの家

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早く出よう、と呟いたのは更夜である。 朝、見舞いにきた成來はジョインに明日の退院の許しが出たと言った。 それを聞いた途端、更夜は顔を歪め、低い声でそう漏らした。 『今は一時一時が惜しい』 『これ以上、無理をさせられるか。治療においては、俺はなにも言えない』 『多少の無理は覚悟の上』 更夜は言うと成來に微笑んだ。 顔色はだいぶ良いが、やはり頬は少し痩けたままである。 『ヴェルナーさん、これ以上、ここにいてはいけない。 私がいればやがてフィンやその家族に影響が出ます。違いますか?』 『それはー』 成來は言葉に詰まった。 更夜の言う事は正しくもある。このまま長居しては更夜達がいた痕跡を残すことになる。後にそれがあらぬ所に洩れてしまっては思わぬ災禍を受けてしまうだろう。 第一、更夜は竜である。竜の生態を医学の下に置いてはふとした事からその秘する事実を明かしてしまうかもしれなかった。 『抜け出してでも、私は行きます。 もう4日です。山がいつ動き、戦い始めますか。 急がないと。私がここに来る意味がなくなる』 成來は驚いた顔で更夜を見返した。 『アリロール、お前はー』 それ以降の言葉は、話せなかった。
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