フィンの家

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一時間もせぬうちに、更夜はジョインと話をつけたようだった。 更夜は一度病室から成來を追い出し、ジョインと二人で話をした。 多少覚束ない言葉ではあるが、医師同士の込み入った話である。 成來は病室の外で待っていたが、荒げた声もなく、ただ出てきた時のジョインの悔しげな顔が成來の胸をえぐった。 成來が中に入れば、更夜は窓の外を見たまま座っていた。 『お昼過ぎには出ますから準備をお願いします。 早く、首都に行きましょう』 更夜は小さく呟いた。その声は無機質である。 『何を話した』 『…普通に説き伏せただけです』 更夜は振り向いた。 その瞳は色を隠しているせいか、澱んで以前の輝きはない。 「私は巻き込みたくない。わがままだけど、そう決めた」
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