フィンの家

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二人は昼を食べてすぐ、ランゲンザルツァを発った。 エリーゼとフィンが駅まで見送りに来てくれたが、ジョインとは病院で別れた。 退院の準備ができた後に成來はジョインに治療費を渡そうとしたが、彼は治せなかったと頑なに受け取ろうとはしなかった。 更夜はそれを察し、布団を整えた時に枕下に金を忍ばせていたのだが、それを成來やジョインが知ったのは発ってからであった。 「アリロールは何を言いました?」 成來はジョインに聞いた。更夜は医療品をいくらか看護士に分けてもらっていた為、彼等からは離れていたからである。 「急ぐとだけ。それとあの傷はヴェルナーさんに関わりのない所で作ったものだから、責めないでくれと」 ジョインは笑い、成來にカルテを差し出した。 「アリロールさんのです。こちらの言葉はまだ難しいでしょう。これを読んで教えてあげて下さい」 成來にはカルテというものが全く分からない。 いくらか文字が連なり、最後に"要観察"と書いてあった。 その一言に、ジョインの無念さと更夜の決意を感じ、成來は頭を下げる他なかった。 やがて更夜が医療品を手に現れ、二人で別れを言い病院を去っていった。 去り際、フィンの家に行きそれで駅に向かうと伝えると、ジョインは駅までエリーゼに送らせると気を使ってくれた。 街にはリンブルク州侯の末娘の事件からか警官が多く、二人は甘えることにした。 「本当は、あなたと別れるためなのですよ」 ジョインは病院の窓から、遠ざかる成來の背に投げかけた。 「あなたが気付くと、神に祈ります」
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