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青年が男と別れ、店から出たのはそれから30分と経たない頃である。
月が高く、夏ではあったが雲もなく、星が綺麗に見えた。
青年は歩きつつ、後ろから被り物をした誰かが着いていると気付いた。
どうしようかと迷い、彼は早足で小道に逸れた。
するとその誰かが走って追ってきた。
しかし、小道に入っても青年の姿はない。
可笑しいと辺りを見回した時、後ろから肩を叩かれた。
「誰じゃ」
青年は聞くと被り物を剥ぎ取った。
中からは緑の髪をした、やけに若い少年とも言える男が現れ、青年は幾分驚いた。
それは彼の歩き方が静かで、周にしては武人のような歩き方であったからだ。
「あの…店で周に行きたいと話してたから…」
「それがなんじゃ。なぜ着けよった」
青年の言葉に、少年は向き直り、頭を下げた。
「お願いがございます。まだ周に行きたいならばどうか私と山越えをしては下さりませんか」
「山越え?」
次は青年が驚く番だった。
「私は周国西の生まれの孝風と申します。
仙道です。魔界は金海山に籍を置いております。折り合って下界に参りました。
どうあっても故郷に帰らなくてはならないのです」
右手を握り左手で包む、周国独特の挨拶を孝風と名乗る少年はした。
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