4人が本棚に入れています
本棚に追加
カンカンと家の扉が鳴り、ネリーは腰を上げた。
ネリーの家にはよく幼なじみのアンナや訪問商が訪ねてくるが、今の時間は昼過ぎで二人とも仕事の時間である。
他の知り合いにもこの時間に訪ねてこれそうな者はいない。
ネリーの住む場所には主婦などは存在しなかった。
不思議に思いながらもネリーは扉を開き、途端、瞠目した。
「ヴェルナー!」
叫ばれた男は僅かに笑い、久しぶりと言った。
「いつ帰ってきたの」
「今さっき帰ってきてな…今いいか」
「えぇ…入って頂戴」
そう言ってネリーは扉を開ききり、ヴェルナーを中に招いた。
ネリーはヴェルナーを眺めながら、彼の後ろを見て驚いた。
彼の肩より背の低い少女が、ヴェルナーに促され姿を表した。
瞳の大きく少し垂れ目で、鼻筋がすっとして高くもなく鼻梁が整い、唇も綺麗な薄紅の色をしていた。
ネリーが見た中で初めての、恐ろしく美人な少女である。
彼女は肌が白かったが、差し込んだ日を受け止め、光を放っている様だった。
「アリロールです。はじめまして」
少女はその顔に似合った、愛らしい鈴のような声で言うと頭を下げた。
最初のコメントを投稿しよう!