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更夜達は驚き、手に絡みつくフィンが笑顔で早く入ろうと言うのに気付かなかった。
首が痛くなるほど見上げて、それでやっと目の前の建物の頂点が現れた。
「本当にここがお前の家なのか?」
「うん!」
成來の問いにフィンは元気よく頷いた。
更夜の腕を掴んだまま、フィンは扉へ向かう階段へ駆けていった。
「成来さん、家の方は驚かないでしょうか」
更夜は静かに呟いた。
周りに人はおらず、ただ広い庭園が広がるばかりである。
「一応、手紙は出したが…」
ここまで誰もいないと、まるで忍び込んだ様で居心地の悪さを感じた。
フィンが呼び鈴を鳴らすと、暫くしてとんとんと軽やかな足音がした。
大きな扉が開かれ、中から現れたのは更夜より10センチほど背の高い女だった。
年は更夜と一回り違う程に見える。
灰色の髪を後ろで括り、凜とした空気が漂っている。
「お母さん!」
フィンが更夜の腕から離れ、女に抱き付いた。
「フィン!」
女はしゃがみ、フィンの頬や肩、腕を触り、フィンに何の傷もない事を確かめ、安堵の息を吐くとぎゅうと抱きしめた。
「奥様!」
家の奥から女を追いかけた男が現れた。
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