フィンの家

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フィンの家はランゲンザルツァという町にある。 ランゲンザルツァは悪魔の地の中部にある。東と西が川に挟まれ、北にある高い山のふもとから南に町がひろがり、鉱泉のある保養地として有名であった。 その町外れの大きな屋敷が、フィンの家である。 「よくフィンを救い出して下さいました…」 「いえ、たまたま私達も逃げる所でしたから。 突然のお手紙、驚かせて申し訳ありませんでした」 「いえ…確かに驚きましたが、とても嬉しく思いました」 フィンの母、エリーゼは言って笑った。 成来は悪魔の地に入った次の日のうちに手紙を出した。それが無事届き、今はこうしている。 成来はエリーゼの返事に安堵しながら、大きな窓から見える庭に目をやった。 執事に見守られながら、フィンが花を摘み、更夜に見せている。 更夜は笑いながら、その花をうまく編み、花飾りを作ってフィンの頭に乗せた。 「あの子にしては珍しく、仲良くさせて頂いて… 騒いだり、我が儘を言ったりしたでしょう?申し訳ございません…」 エリーゼが頭を下げると、成来は頭を上げてくれと懇願した。 「フィンはずっと静かで、我が儘も何も言わず偉い子でしたよ。 むしろ、救ってもらったのがこちらです。賢い子ですよ、フィンは」 言って、成来は話し始めた。 仙界を越えた直後の事、汽車での道中での事、詳しい内情は抜きにして、彼は話した。 「アリロールは下界育ちで悪魔の言葉を話せません。 汽車で質問された時、助け舟を出せるくらい、あの子は賢い。きっとあなたの教えが良いからでしょう」 「そんな事。きっとあの子の師匠が育てて下さったのでしょう。 子供はすぐ育つものですから…」
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