フィンの家

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更夜はパチリと目を開いた。 辺りは暗く、目が慣れるまで数秒かかった。 見回せば、個室の病室だと分かった。カーテンは閉まっていたが、薄いのか外が暗いのが分かる。 横のサイドテーブルにはライトがあったのでひとまず付けると、腹がぐぅと鳴った。倒れたのは昼前であったと思い出せば、なんら不思議な事ではない。 腹の痛みはまだきりきりと痛んだが、随分和らいでいた。 俯いて傷口を見ようとすれば、服が替えられているのが分かる。 消毒された、薄い生地の服である。ワンピース状で、腰にあるリボンで脱ぐ事のできる安易な作りだった。 しばらくすると、足音がして扉が開いた。 入ってきたのは出で立ちからして看護婦だと分かる。灯りを持ち、更夜の姿を見て驚いた表情で出て行こうとした。 「アイネンモメントビッテ!」 更夜は咄嗟に叫んだ。 『待って下さい。大丈夫、すこし、言葉分かります。 急がないで、ここはどこなのか、教えて下さい』 更夜はたどたどしく悪魔の言葉を使いながら話した。
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