ゆうき

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 カンキチの帰りがおそいので、心配になって探しに来ていた母さんは、2人の姿を木のかげから見ていました。  そして、にっこりほほえむとそっと帰って行きました。  2人の練習は、それからも毎日続きました。  数日後、また飛び降りる練習がありました。前よりもさらに高くなっていました。 「ちょっと、高いね。」 「僕…こわいよ。」  前回飛べていた子供たちまで、不安そうでした。 「前回よりも高くなってはいるけど、翼をバタバタ羽ばたかせれば大丈夫だから飛んでみて。」  カアコ先生が手本に飛んでみせましたが、それでも誰も恐がって飛ぼうとしません。 「先生、僕…飛んでみます。」  カンタが言いました。カンタは大きく深呼吸をすると、翼を広げて上手に飛んで見せました。  子供たちの中から割れるような拍手がおこりました。 「カンタ君、素晴らしかったです。他に飛ぼうという、勇気のある子はいるかな?」  しかし、今回は誰も恐がって飛ぼうとはしません。カンタの後は全員パスで、カンキチの順番になってしまいました。  今までのカンキチならビビって逃げ出していたでしょう。  でも、カンタが声援を送ってくれました。 「大丈夫。カンキチなら必ず飛べるから…勇気を出して。」  カンキチは涙が出そうなくらい恐かったのですが、 「ぼ…僕、…飛びます。」 ふるえる声で言いました。    その場にいた友達は驚きました。皆信じられないという驚きの表情を浮かべました。  でも次の瞬間、友達は割れるような拍手をしてカンキチを応援してくれました。   「カンキチ頑張れ!」 「絶対飛べるから。」 「負けないで~。」  その場にいた子供たちが、大きな声で心からの声援を送ってくれました。  今さら逃げ出すわけにはいきません。カンキチは目を閉じて大きく深呼吸しました。 『カンタと練習していた時より、少し高いだけだ。僕なら飛べる。…絶対に僕には飛べるんだ。』  カンキチはそう自分に言い聞かせると、大空を見上げました。  そして大きく翼を羽ばたかせると、フワッと体が宙に浮きました。そしてもう一度大きく翼を羽ばたかせると…  気づいた時には友達やカアコ先生の上空をゆったりと飛んでいました。
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