ゆうき

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 自分でも信じられないことでした。これはひょっとしたら夢かもしれないと思いました。  どうせ夢なら恐くなんかないぞ。もっと、遠くまで行ってみよう。  いつもカンタと遊んでいる林も見えてきました。  いくつかの畑やたんぼを通り越して行くと、広くて大きな海が見えてきました。  もちろん、海を見るのは初めてでしたが、カアコ先生に以前聞いたことがあったのです。  海というのは、川よりもずっとずっと大きいもので、波という水のかたまりが砂浜にとめどなく打ち寄せるのだと。  波は白い水しぶきになって、ザザーッ、ザザーッという音をたてながら、砂浜に何度も何度も打ち寄せていました。 「きれいだなぁ~。」  カンキチはうっとりして、しばらく美しい海をながめていました。 キュー…キュルキュル  カンキチのお腹がなりました。夢でもお腹って減るものなんだな。  夢の続きは今度見よう。そろそろ家へ帰ろう。  来た道を戻り学校まで来ると、校庭にはたくさんの人がいてこちらを見上げています。 「あれっ、皆どうしたの?」  カンキチが校庭に降り立つと、友だちがかけよって来ました。 「カンキチ君すごいね。」 「びっくりしたよ。いつから飛べるようになったのさ。」 「カンキチは勇気があるよ。今まで弱虫なんていじめてごめんね。」 「ずいぶん遠くまで飛んで行ったんだね。どんなものを見てきたの?」 「カンキチ君かっこいい~」 「今度僕にも教えて…」 子供達は驚くと共に、カンキチの勇気をたたえました。  夢じゃなかったんだ。カンキチは皆にほめられて照れくさくなりました。 「カンキチ、良かったな。」 カンタがカンキチの肩をポンとたたきました。 「カンキチ君、素晴らしかったです。私がまだ教えていないことまで出来てしまうなんて…先生びっくりしたわ。」 カアコ先生もおどろきをかくせないようでした。 「今度私が休みの時は、代わりに皆への指導をお願いするわ。」 「そんなぁ…無理ですよ。」 カンキチが言おうとすると、 「僕もカンキチに教えてもらいたいです。」 カンタはウインクをして言いました。 終わり image=475868034.jpg
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