43人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
自分でも信じられないことでした。これはひょっとしたら夢かもしれないと思いました。
どうせ夢なら恐くなんかないぞ。もっと、遠くまで行ってみよう。
いつもカンタと遊んでいる林も見えてきました。
いくつかの畑やたんぼを通り越して行くと、広くて大きな海が見えてきました。
もちろん、海を見るのは初めてでしたが、カアコ先生に以前聞いたことがあったのです。
海というのは、川よりもずっとずっと大きいもので、波という水のかたまりが砂浜にとめどなく打ち寄せるのだと。
波は白い水しぶきになって、ザザーッ、ザザーッという音をたてながら、砂浜に何度も何度も打ち寄せていました。
「きれいだなぁ~。」
カンキチはうっとりして、しばらく美しい海をながめていました。
キュー…キュルキュル
カンキチのお腹がなりました。夢でもお腹って減るものなんだな。
夢の続きは今度見よう。そろそろ家へ帰ろう。
来た道を戻り学校まで来ると、校庭にはたくさんの人がいてこちらを見上げています。
「あれっ、皆どうしたの?」
カンキチが校庭に降り立つと、友だちがかけよって来ました。
「カンキチ君すごいね。」
「びっくりしたよ。いつから飛べるようになったのさ。」
「カンキチは勇気があるよ。今まで弱虫なんていじめてごめんね。」
「ずいぶん遠くまで飛んで行ったんだね。どんなものを見てきたの?」
「カンキチ君かっこいい~」
「今度僕にも教えて…」
子供達は驚くと共に、カンキチの勇気をたたえました。
夢じゃなかったんだ。カンキチは皆にほめられて照れくさくなりました。
「カンキチ、良かったな。」
カンタがカンキチの肩をポンとたたきました。
「カンキチ君、素晴らしかったです。私がまだ教えていないことまで出来てしまうなんて…先生びっくりしたわ。」
カアコ先生もおどろきをかくせないようでした。
「今度私が休みの時は、代わりに皆への指導をお願いするわ。」
「そんなぁ…無理ですよ。」
カンキチが言おうとすると、
「僕もカンキチに教えてもらいたいです。」
カンタはウインクをして言いました。
終わり
最初のコメントを投稿しよう!