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のんびりと
「来週にチアさんの誕生日で、チアさんがお酒を飲みたいらしいので、僕の家でパーティーみたいな催しでもしませんか?」
「私はいいけど、チアはイツキくんと二人きりのあま~い時間を過ごさなくていいの?」
あま~いという言葉のイントネーションがやたらとくどいけど、突っ込んでいたらきりがないので、とりあえず無視をした。
「みんなで楽しく過ごすのも楽しそうじゃない」
チアさんはにこりと笑みを返し、全員を見やった。
「そういうことなら買い出しは俺と千晶が行こう。千晶は二十歳だから酒を買えるし、荷物は車で運べるからな」
タカシさんが参加の旨を告げ、買い出し担当を申し出てくれた。
「それにハンドルキーパー的な役割もいるしな」
まあ、確かに我が家に来た人の送迎は必要だったし、申し出てくれたのはありがたい限りだ。
「せっかくで悪いんだけど、僕は父さんのお見舞いに行かないと行けなくて、来週は大体病院なんだ」
「あら、残念…みんなで楽しくすごしたかったのだけど…イツキ、延期にしましょう」
それは既に誕生日では無い気もするけど、気持ちは分かる。
「僕のことはいいから、みんなで楽しんでよ。この先たくさんみんなで遊んだりする機会はあるんだからさ」
優しい笑みをたたえながらチアさんに諭すように語る。
大人しくて無口な人だったけど、こんなにも明るくなるなんて。仲間の成長はとても嬉しいものだ。
「そう…なら、あなたの誕生日にみんなで過ごしてもいいかしら?」
「もちろん」
「さ~、話も纏まったところで~…チアさんは何がほしいですか?」
さっきから押し黙っていたアスミさんがようやく水を得た魚のように復活した。
いやまあ、このペースに着いてこれてる僕の方が驚きなんだけど。
「ん…特にないのよね。みんなが居てくれるだけで満足しちゃっているものだから思い浮かばないわ」
確かに欲をかかない人ではあるけれど。
少しくらいは欲をかいた方がいい気もする。
「ん~…じゃ何か見繕いますね~」
「そんなに気を使わなくていいのに」
遠慮の気持ちがありありとにじみ出ている。
「なに言ってんだ。仲間に遠慮なんかすんなよ。みんなお前のことが大好きなんだ。ありがたく受け取っておけよ」
早川さんが諭すように語りかけ、チアさんは少し考えてから、深く頷いた。
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