芽吹く新緑のような

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「漫画研究会…よくいちゃもんつけてくるあの人たち?」 「うん。僕はここが好きだからさ。告白されて漫画研究会に行くのは自分が許せないよ」 敵対的な立場にあるらしい漫画系列のサークルの人からの告白…。 疑いたくはないのだけど、何か裏があるんじゃないかと勘ぐってしまう。 「漫研の人達がどうしたんです?」 アスミさんは不思議そうに首を傾げた。 「簡単に説明すると小説を馬鹿にしてる人達がいるのよ」 チアさんは簡潔に説明した。 アスミさんはなるほどと頷く。 「めんどくさいし、相手にはしてないけどね~」 僕も同じなので相手にはしたくない。 もうあんなのはごめんだし。 「俺たちは別に漫画を馬鹿にしてるわけじゃないんだけどな。何が気に入らないのか、小説を真っ向否定している」 「それはまた微妙ですねー」 殆ど棒読みなアスミさんは半ば呆れており、深いため息をついた。 「まあ、嫌がらせと判断すれば規定に基づいてサークル解散になるから手は出せないからほっていてるんだよ」 規定か。 この手のルールがあれば確かに無意味に争ったりはしないだろう。 それに大学生にまでなって表だった嫌がらせもしないだろうから大人しいものである。 「それにあっちは既に解散までリーチなのよ。私達のような小説中心の文芸サークルは多くてね。大きなサークルは何度となく嫌がらせを受けているわ。私達は大型サークルとは仲がいいし、相互協力しているから漫画研究会は迂闊に手は出せないしね」 規定はあっても、やっぱり警戒は怠らないあたり、以前のような事は勘弁願いたいのだろう。 「すんません。漫画研究会の会長ですが」 噂をすれば影が差す。 いいタイミングだと言える。 まあ、サークル間の通達のようなものだろう。 現に勧誘イベントのチラシをタカシさんに渡していた。 「いい加減に漫画をかきませんか?」 やたら尊大な態度で室内を見渡している漫画研究会の会長さんは不適に笑った。 「新人らしい人もいるし。勿体ないから俺たちのところに譲りません?」 僕の方を見やると、指を指した。 銀の馬車を読んでいたので、彼に反応するのが面倒くさい。 「ねえ新人さん。うちのサークルに来ない?」 小馬鹿にしたような視線で僕を見ていることは認識している。
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