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なんともまあ、快活に笑うことか。
滅多に見ることのない笑い顔に安堵感が湧き起こる。
「とりあえず、チアさんの誕生日は僕の家で遊びましょう」
「ええ。今から楽しみだわ」
うきうきした様子で僕を見やる彼女は、実に子どもっぽくて可愛らしい。
最近の凛々しい大人の雰囲気を纏った彼女を思うと、やはりギャップの差は広い。
この人の普段とそうでないときの印象は、おもしろいほどに正反対のようだ。
「決まったらやることがないな」
まあ、チアさんの誕生日は来週だし、特に何か準備するかと言われれば何もないのだけど。
「じゃ、みんなでカラオケにいこーよ」
チアさんがはしゃぎ気味で提案する。
元気よく手をあげるその様子は、見た目の小柄さと、普段の言動とも相成って、本当に子供にしか見えない。
高校時代から時々思っていたのだけど、千晶先輩は本当に年上なのだろうか。
しかし、言ったらあとが怖いので黙って声を呑んでいる。
「私もイツキもカラオケになんか行ったことないわよ?」
うん、大体はゲームセンターとか僕の家で遊んでたからなあ。
「え~?普段はどこでいちゃついてるんですか?」
いちゃついている前提の会話になっている。この会話は不利だから入るのはよそう。
「普段はゲームセンターとか湊で過ごしてるわよ」
「普通のカップルだね~」
「だって普通だもの」
普通じゃないカップルって何なのだろう。
帰ったら検索してみよう。
「え~。ハヅキちゃんからもの凄く甘えてるって聞いたんですけど?しかも夜なんかは…」
「ち、ちょっと!それ以上は禁止よ!!」
ああ、慌てふためいてるなあ。
諦めきっていた僕としては傍観を決め込むしかないのだけど。
「なあ、チアさんって、結構大胆な人なの?」
「聞いたら悪い気もしたが、俺も気になる」
うーん、僕も逃げ道を塞がれてるなあ。
「イツキ、答えちゃ駄目よ!!」
チアさん、ムキになってるとこ悪いんですけど、墓穴を掘りまくって、地表と地表が繋がってますよー。
早川さんを除いた四人は僕とチアさんに詰め寄るように聞いてくる。
本当に勘弁願えないだろうか。
ああ、でも、こんな空気は久しぶりだ。
チアさん達が高校を卒業してからは味わうことのない空気だったし、短時間しかいないのに、懐かしい気分になっていた。
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