はじまりの風

1/5
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/196ページ

はじまりの風

将来に約束したプロポーズをチアさんに贈った、あの秋の日から、もう一年半も経っていた。 春の風吹く昨日からキャンパスで過ごし始める。 あれから何度も愛を囁き、喧嘩をし、また僕たちは何度も絆を深めていった。 先日電話があった。 「約束、まもってくれたのね。ありがとう。私、新しく出来た仲間達と文芸サークルを創立したの。あなたの席は既にあるわよ」 なんて、赤面してしまいそうな言葉が脳を刺激する。 本当に嬉しそうで、何よりだ。 僕達が高校を卒業を皮きりに、僕達の周囲は激変していった。 フレディーは、一度アメリカに帰り、通訳になるために勉強していて、時々電話がかかってくる。 アスミさんはフレディーとの結婚を夢見て花嫁修行中。ちなみに僕とチアさんと同じ大学に合格している。 ユキノさんは…うん、そんな趣味もあったのかと感心してしまった。…だって、妹と恋人同士だなんて普通は想像つかない。なお、地元の女子大に合格している。 マスターとハルカさんは先日、やっと結婚した。 結婚式では驚いたことに学校の演劇部があの演目を演じに来ていた。マスターの男泣きは永遠に忘れない。 チトセさんは、マスターが結婚して安心したのか、今はすごくかっこいい彼氏さんと同棲している。しかも今度結婚するそうだ。結婚式には呼んで貰いたい。 ユウタさんは再び作家となっている。武知美海が男だったって今になって騒がれている始末だ。 本当に激変していった僕達の周り。 これから始まる、僕の新しい物語は、もうそこまで来ていて、あとは僕が扉を開け放つだけだ。 さあ、楽しい春の風、はじまりの風が吹き抜ける日常へ力強く進もう。
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!