幸福と不幸(短編)

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「でも、私、嘘はついてないわ。『被疑者はこのリストの中にいる』とも『被疑者を全員ルーズリーフに書いた』とも言っていない。私が言ったのは『被疑者は全員三森カグヤと面識がある』、だけだもの」  全く以てその通り、化山はあの四名をルーズリーフに書いて俺に『これだけしか被疑者がいない』と思いこませただけ、嘘は何一つ吐いていないし、書いていない。  俺はそれに見事に引っ掛かったのだ……。いや、まぁいい、気を取り直して、 「次、お前は俺に盗聴させた。何の得もない盗聴を延々と。あれは盗聴によって俺を更に混乱させる為と犯人を煽り、俺にプレッシャーを与える為。どっちもマイナス要素だ。てっきり、ヒントをくれるものばかりと思っていた俺は大きな肩透かしを喰らった」 「あなたの焦り様は無様で滑稽で、とても面白かったわ」  最低だ、この女。 「まぁ、とにかく、この二点。これらが俺を惑わせた。これがなければ、一日目の夜で俺が予想した第一犯人候補は茅木ではなかっただろう」  じゃあ、犯人は誰なのか、という事になる。  簡単に三森カグヤを殺せて、家出に見立てることが出来、尚且つ、死体を隠すのに苦労しない人物。  可能性で言えば、茅木静菜を越えて、トップ。 「犯人は『三森 リキ』だ」
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