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「…………」
俺は強く頭を掻いた。
ああ、もう煮詰まって考えていても仕方がない! とにかく、動機で言えば茅木がトップだ!
異論は認めん!
勿論、この部屋にいるのは俺だけなので異論も糞もないのだが。
俺は被疑者リストの茅木の名前上に乱暴に①と赤ペンで印をつけた。
あとは……化山紗名。
グレイポジション。犯人かもしれないし、そうじゃないかもしれない。全くの謎。
ただ、こいつが犯人の場合、ほとんどの情報を嘘かどうか疑わなければならなくなる。
「ううむ」俺は唸った。
全員を取り調べる――のはダメだ。犯人を煽ることになり、結果的に俺の寿命を縮めてしまうかもしれない。
犯人の発見に近づくことはできるかもしれないがリスクが大きい。両刃の剣だ。
――なら、どうする?
俺は自分が赤ペンでつけた『①』を見つめ、眉間を指先でトントンと叩いた。
――現時点で一番犯人である可能性の高い人間を尾行。
「……それしかないか。尾けていけば、ぼろを出すからもしれないし、物的証拠も手に入るかもしれない。死体を発見できれば言うことなし」
午後十時半。考えを纏めたところでベッドの上に横になった。暖かい掛け布団を頭までスッポリ被る。まだ早いけれど、もう寝よう。今日はやけに疲れた……。
重い瞼を閉じたところで、いきなりガタンッと何かが落ちるような物音が部屋に響いた。
「――っ!」
掛け布団を跳ねのけ、立ちあがってファイティングポーズ。
窓付近、問題なし。ドア付近、問題なし。ちゃぶ台、問題なし。本棚、問題なし。
今日のことで神経が過敏になっている俺は心の底から冷えていくような不安と恐怖を感じている。……足元から微かな振動が伝わってきた。これは俺の心がもたらしている精神的ぐらつきか?それとも恐怖で俺の体が震えているのか?
ふと視線を下に向けると、床の上でブルブルと俺の携帯が震えていた。
……なんてことはない、どうやら、バイブレーション機能でベッドから携帯がずり落ちてしまったようだ。さっきの物音の正体はそれだったのだ。
安堵の息をつきつつ、携帯を拾い上げて開く。送信者の名前を見て少し驚いた。
……化山からだ。
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