幸福と不幸(短編)

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『どう? 犯人はわかったかしら?』  端的で小馬鹿にしたような文。  こいつはふざけてるのか?   これだけの情報でわかる訳がないだろ。  『わからない』、そうメールを送ると一分もしない内に返事が返ってきた。 『じゃあ、誰が一番犯人である確率が高いと思う?』 『茅木静菜だ。今の所ダントツで一位』 『妥当なところね。それで、これからどうするの?』  つまり、捜査方針か。恥ずかしながら今のところは尾行という犯罪チックな案しかない。  それを伝えると、しばらくしてから再びメールが来た。 『出題者としての義務を果たすわ。明日、丸一日予定を開けといて、また後で連絡するわ。それまで起きといて』  出題者としての義務? そんな物があの女にあったのか?  俺は小首を傾げ、携帯を枕元に置き直し、ベッドに横たわった。  後でまた連絡するって言っていたから……起きてなくちゃいけないのか。  俺は仕方なく、化山から連絡が来るまでベッドの中で少し考え事をすることにした。  考え事……最大の謎、化山紗名の事だ。  そもそもなんであいつは俺に探偵役なんて押し付けたんだろう?  講義中、途中で不機嫌になって、俺をサークル室に強制連行し、探偵役をふっかけた。  幾ら不機嫌になったからってこんな命を賭けた嫌がらせ、普通するだろうか?  それとも、俺がこの謎を解くことに何かしら意味を見出したのだろうか?  もしかして他人を巻き込むことが好きなのだろうか?  数分、あれこれ考えてみたが……考えれば考えるほど、あの女がわからなくなる。  ……ああ、何かもう、眠い……。  起きてなくてはと、思いつつ、睡魔に負けて俺は瞼をおろしてしまった。
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