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自分には能力があった。
さながらコナン君や金田一一のような。そう誰かに言うと「おおっすげぇじゃん!」と羨望の眼差しを向けてくれるかもしれない。優越気分に浸れるだろう。というより浸ってみたい。だが、俺はこの能力を忌み嫌い、あまり口外しないようにしてきた。
だって、俺が持っているのはコナン君や金田一君のような一つの真実を見つけ出す、ずば抜けた推理力じゃないから。
じゃあ、『お前の持つ能力ってなんだ?』って話になる。
的を射た言い方をするならば『不幸』だ。
おおよそ自慢できることではないこの能力は普通の人だと、気持ち悪い、近寄らないで、と奇異の目を必ず向ける。
そう、飽くまで『普通の人』の場合は。
俺はいい加減、この『不幸』にうんざりしていた。誰かに相談できればどれだけ気分が楽になるだろう。と、いうより、誰かこの『不幸』を聞いて引かない人はいないだろうか? 秘密を知ってくれて尚且つお友達で居てくれる人はいないのか?
そう思い続けて、はや数年、大学入って一年目の十月二十四日、金曜日。
英語の授業中二人一組で発表することになった時、たまたまペアになって知り合った奴がいる。そいつは普通じゃない。
ちょっと変わった……いや、変わりに変わりまくった、超変人である。
こいつなら、俺の事、わかってくれるんじゃないかって話してしまった。
俺の能力であり不幸、――俺の行く先にいつも殺人者が現れることを。
「あら、あなたもなの?」
その事を告げると俺の隣で彼女は頬杖をつきながら驚いたようにそう言った。
肩で切りそろえた真っ黒な髪が印象的。スリムな体に黒のセーラー服と赤いリボンがやたら似合っている。細い輪郭、どこか冷めた目。細く長い足。どれも素晴らしく、その姿は儚げな美しさを持っていた。
『美少女だ!』と絶賛したいところだが……どうにも出来そうにない。
……この人は『大学構内』でセーラー服をいつも着用しているのだ。たまにブレザーの時もある。
彼女は今年入学した十八歳のコスプレ大学生。名前を『化山 紗名(かやま さな)』と言った。
『何故、セーラー服やブレザーを着るのか?』と問うと、趣味と実益を兼ね備えた服だから、と答えられた。
彼女は――ド級の変人である。
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